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a short, small, good story 99'


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2.水族館

体長2mくらいのイルカが2匹 
円形プールの中を猛スピードぐるぐる泳いでいる。
もう観察していて20分は経とうとしてるのに 
サキは一向にイルカの前を動こうとしない。
僕はそんな彼女が早く次の魚へ興味を示さないかと思ってサキを横目で観察している。 
「イルカと交信中なの。もうすこし待って。」

サキというのは 今夏終わる頃にハルが紹介してくれた女の子で
僕はいま彼女と水族館に来ている。 
11月も終わりに近い凍るような寒さの週末で 
たぶん僕らを含めても10人くらいの入場者だと思う。
薄暗くひっそりとした館内に ときどき子供の歓声が響いて 
またひんやりとした館内に戻る。
「アザラシが見たい。」と彼女が言い 
僕らは敷地内にあるアザラシコーナーへ向かって館外に出た。
目の前には高波を荒々しく防波堤にたたきつけた海が広がり 
空はどんよりと灰色で強烈な冷たさの浜風が僕の手や耳を引きちぎっていくようだった。
アザラシは想像以上に巨大でキバも鋭く エサを欲しがってクークー鳴いていた。
「近寄ると頭からガブリと食われそうだね。」
僕らはアザラシにエサを与えている。
「うまくエサをチャッチできるよね。きっと彼らはアザラシの着ぐるみをきた人間なんだよ。
僕の言葉が聞こえたのか ほんの少し笑って 彼女はアザラシにエサを与え続けている。
僕はそんなサキのことがなんとなく好きだ。 

知り合ってまだ日が浅いけど あまり笑わない口数の少ない彼女が 
たまに笑ったりすると 僕はとてもうれしい気持ちになる。
休日をふたりで過ごしても お互い無口でいっしょに音楽を聴いているだけなのだけど
彼女のかける曲は僕もすぐ好きになれたし ハズれがなかった。 
最近 僕はこの無口なサキといっしょに過ごす穏やかで平和でちょっと混沌としていて曖昧な時間が
できるだけ長く続けばいいと思ったりしている。

上を見ると 
アザラシのエサをねらって数十匹のカモメが飛んでいて 
やがて閉館を知らせるアナウンスが流れてきた。
「きっと来週末くらいでもう営業終わっちゃうね。きょう来てよかったね。」

まもなくオフシーズンに入るのだ。



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